ぱちんこ台を分解して組み立てたら治っていなかったーそれでも昔は稼働させていたー

パチンコ台の分解は自分にとっては苦手なことではなくてむしろやりたくてうずうずしてしまうほうでした(基本的にはやってはいけないこと)。新枠の新台が納品されたときにあまりの分解したさに納品ホヤホヤの新台のセル盤を外して台枠を分解しようとしたとき上司にこっぴどく叱られましたものです。

 

「新台が万が一元に戻らなくなったらどうする」と。台が動かなくなったときには「絶対に治せ。何がなんでも動かせ」と言われるのに新台だけは最後まで分解の許可はおりませんでした。

分解は台枠だけにとどまらずセル盤にも及びました。セル盤の分解は主にセンサー系の故障だったり役物(液晶や盤面部に設置され、演出機能を持つ稼働体のこと)の修理だったりと結構多岐に渡りました。その中で「あ、ダメだこれ 元に戻せないかも」と思った修理がありました。このときはまだ分解スキルが上がりきる前のころで、修理に6時間位かかりました。今から10年以上も前の機種だと思うのですがぱちんこでCRゴーストという台がありました。

デミ・ムーアが可愛かったCRゴースト ニューヨークの幻

昔、デミ・ムーア主演の「ゴースト/ニューヨークの幻」という映画がありました。当時この女優があまりに可愛くて、何度も映画を見た記憶があります。このCRゴーストは、そんな映画をモチーフにしたパチンコで、液晶上部にシャカシャカと動く稼働体がありました。あるときお客さんから役物の動きがおかしいと言われ異変に気がつきました。すでにCRゴーストは台としての旬はとっくに過ぎてはいたのですが特定のお客さんが好んで遊技していたこともあり、稼働はかなり上々でした。実際に、年配のお客さんの来店するきっかけになればとゴースト自体かなり甘めに調整してありました。しかし、そんな中でその常連さんからのクレーム。役物によっては演出にそこまで影響しないものもあるのですが、ゴーストの役物は液晶と連動して逆に動かないと演出としておかしくなってしまう、いわば無くては演出として成立しない装置でした。というわけで、私に役物修理の依頼が飛び込んできたわけです。

数百にのぼる配線に泣きそうになる

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パチンコ業界から足を洗って数年が経つので現在のパチンコ台の中身がどうなっているのかは知りませんが、当時のパチンコ台はきらびやかに見える盤面部分とは異なり、盤面裏側はかなりカオスな作りになっていました。上の写真はパチンコ台のものではありませんが、イメージで言えばこれと酷似しています。物凄い量の配線が断線しないようにプラスチックのカバーで覆われているのですが、隙間なくぎちぎちに固定されておりカバーを外すとこんぱくとにまとめられた配線の束がボンッと膨らむように盤面裏を覆い尽くしました。それをみて「今ならまだ引き返せるぞ」そんな声も聞こえてきましたが、ここまできて引き返せるかと分解の手はとまりませんでした。

数えるのが嫌になるくらいの配線を見てこれらをひとつひとつはずしていくわけです。当時はまだ今のように写真を気軽に撮影できる環境ではなかったため、紙と鉛筆で配線を模写しつつ分解していきました。こうしたアナログな分解だったからこそ分解スキルが一気に上がったのかもしれませんが、だからこそ誰もやりたがらなかったのかもしれません。

配線を外し外し進めていきようやく役物に辿り着きました。原因はすぐに判明しました。稼働が良かったことで役物を動かす歯車が一つ外れかかっていました。歯車を元に戻したあとに手動で動かして問題なく動作することを確認してもとに戻す作業に取り掛かりました。

スケッチした図が下手すぎて支離滅裂に

分解する際に元に戻せるように配線図を紙に書きながら配線を外していくのですが、あまりに配線が多すぎたことと、自身でスケッチした絵が雑すぎてどの配線をどこのもどしたら良いのかが分からなくなりました。せっかく役物が治っても配線が元に戻らなければ稼働させることができません。修理が終わらず稼働できない事態は当時許されていなかったので『何としても治さなければ』という至上命令が頭から離れませんでした。かといって配線が膨大だったのですぐには治りませんでした。配線を全部つけては電源を入れて正常に動くかを確認、動かなければ再度配線を差し直して、という作業を延々と4時間ほど繰り返す羽目になりました。結局、治りませんでした。正確に言えば、スタートはしますがサイドポケットの賞球がない状態で動かしました。なので完全には治っていない状態、玉がポケットに入っても払い出しがないので、言い方を変えればぼったくり台ですね。いくら球を入れても一切払い出しがないわけですから。ゴーストの台が異常信号を出していることはホールコンピュータですぐに分かりました。遊戯客は年配客でクレームを言ってくる人でもなかったのでそのままこの日は動かし続けました。閉店後にすぐさま分解してみると、サイドポケットに入ったことをカウントする配線が見事に抜けていました。配線が抜けていたのなら払い出しなんてあるわけがありません。猛省しました。

これで治るはずが、、、まさかの断線事故

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CRゴーストが発売された当時の基盤についている配線は無駄に長く配線一本一本が独立した作りになっていました。膨大な配線ではあったものの、コネクタが色分けされていたのである程度は色で判断して取り付けが可能でした。

前回の配線つけわすれが他にもないか全て確認したあと、よし、これで大丈夫と配線を戻していく途中で配線が何かに引っかかってしまい、そのまま配線が切れました。

配線が断線することは修理をする上で頻繁に起こることですが、できるならやりたくない分解修理でした。それは断線を直した場合にはそれが見た目で分かるからでした。断線した部分をつなぎ合わせてハンダで固定してビニルテープで巻いて、というやり方で直したのですがそうなると素人目に見ても『配線を何かしている』のは一目瞭然でした。それこそ「無承認変更」を証明する証拠となりえるものでした。配線の山の奥のほうに押し込み、盤面裏側からもぱっと見では分からないように、何もなかったかのように隠蔽しました。ですが、結局治っていませんでした。

データ異常により結局撤去された

断線が原因だったのかはもう知る由もありませんが、完全に元に戻ることはありませんでした。役物は問題なく動きます。玉の払い出しももんだいなく払い出されましたが、店がデータを管理するモニータにゴーストの台データがしっかりと表示されなくなりました。台の配線を治しつつ、他の配線を痛めてしまったのかもしれません。結局、社内でも『ゴーストの呪い』と言われ撤去されることになりました。ゴーストが治らない原因を作ったのは私です、そんなことは言えませんでした。ゴーストが撤去されたことで「今夜は残業しなくていい」ことを喜んだくらいですから。ですが、この件がきっかけとなって台の分解にはより最新の注意を払って取り組むようになったので、いい勉強だったのかもしれません。何かを身につけるために、嫌な思いはできればしたくありませんが、そんな苦い思いが経験値を爆上げさせたことも間違い無いと思うのです。では、今日はこのへんで。