パチンコ台のことを知るには、分解するのが一番。

f:id:heyaganodame:20200311221406j:plain

昔、営業中にパチンコ台を分解したことがあります。AKB48がはじめてパチンコ台になった時期なのでおよそ8年ほど前です。当時この台は猛烈な人気台でした。当たりやすい確率、当時超絶人気だった歌手ユニットとのコラボ機種、効果の高い攻略打ちなどから初心者からプロまで打ち手を選ばず人気な台でした。また、はっきりとは覚えていないのですが当時このAKBは新台まるまる購入ではなくて、いわゆるセル版(釘や液晶画面がついている盤面のこと)のみの購入だったと思います。ですから遊戯台自体は新品ホヤホヤですが、盤面をはめ込む台枠は使い回しでした。

使い回しの台枠に新台のセル版をはめ込んで稼働させたわけですが連日満席満台で超高稼働をしてくれました。しかし台枠は使い回しだったために至るところでボロが出始めており、導入から数ヶ月すると台のほとんどが同じ部分で故障するという災難に見舞われてました。

店側としては動かせばお金になるため「なんとかして治せ。そして稼働させろ」という命令がおりました。いきなりAKBの台を分解して元に戻せなくなると大問題になるため、同じ台枠を使っている他の機種で台の分解を試みることになったのでした。

思ったより複雑なパチンコ台

先に言わせてもらいますが、許可のない遊戯台の分解は違法行為となりますのでご注意ください。当時の私もこの台を分解したら「未承認変更」になるのでは?と思ったものの『なんとしても稼働させる』というのが会社の方針だったので分解を行いました。

パチンコの台枠は大変複雑な作りのものからとてもシンプルな作りをしているものと千差万別でしたが、このAKBの台枠は中間くらいの複雑さでした。台枠を各パーツに分けるのはわりとシンプルで、そのパーツをさらに分解するには配線やらビスの挿し方などで方法を知らないと時間がかかる、どちらかといえば時間制限のある中ではやりたくない部類の分解でした。

当時私は閉店後にこの台枠が分解できるかを試しにやってみると、時間はかかったものの分解に成功します。そこから今度はそれらを動かせるように組み直していくわけです。はじめて分解した時は数時間かかったのですが、やり方を理解できるようになる頃には分解して掃除して直すまでに30分もあればできるようになっていました。(※一応繰り返しますが、分解して掃除して直すということも、営業中に行うと違法行為となります。閉店後にバレないように行えば多分違法だけど立証ができないので違法ではないのかもしれません。)

人気だったがゆえの故障

そもそもパチンコ台は何年も使うことを想定して作られていません。メーカーも毎月何機種も新台を投下していた当時ですから、1年も稼働させたら新しいものと取り替える、そんなサイクルの中で小さな店舗では台枠は常に使い回しとなり、新台なのに台枠がボロボロでお客さんに「これ、傷がすごいけど本当に新台なの?」と言われることもしばしばでした。

AKBも台枠は使い回しでの導入。台枠がボロボロなので、せめて装飾だけは豪華にしようとあの手この手を使ってお客さんを楽しませていました。

で、このAKB、トラブルが頻発したのはパチンコ玉を弾くために球を誘導する通路(通称カセットと呼ばれる部品)がパチンコ玉がカチカチとぶつかった衝撃でプラスチックが疲労したことによる陥没が原因でした。パチンコ玉は1玉1玉は微々たる重さですが、それが同じ箇所にぶつかることでプラスチックはそのぶつかる箇所に負荷が少しずつ少しずつ溜まっていきます。そして限界をむかえるとついにそのぶつかる面が割れてしまうのでした。そのパチンコ玉が割れてしまった部分にひっかかることで、球を弾くところまで玉が動かなくなってしまうというトラブルでした。

それを簡単に表してみると次の図のようになります。

f:id:heyaganodame:20200601111114j:plain

f:id:heyaganodame:20200601111457j:plain

カセット部分をざっくり説明するとこんな感じになります。玉が通過するたびに赤点部分に負荷がかかっていて、限界を超えたときにそこが割れてしまい、玉がひっかかることで玉が飛ばなくなるトラブルが発生したわけです。

台を細かく分解したことで、トラブルが発生した原因がはっきりと判明しました。

「うわぁ、これは治らんな」

見た目にはっきりと部品が割れてしまっていてそれを元に戻すことは不可能に思えました。

そのため上司に伝えると、

「治せないだって?何を言ってるんだ。そんなの閉店後にやれば問題ないだろう」

つまり閉店後にお客さんが見てないところならばバレないからやってしまえ、ということでした。

繰り返しますが、所轄に変更の届け出を出さない状態で遊戯台に手を加えるのは、「無承認変更」となり違法行為です。ちなみにまじめに申請していたら2週間動かせません。

そのためバレたらマズイと知りつつ割れた部分を治しました。治し方についてはゴニョゴニョゴニョとさせてください。もうお店がないとは言えやってはいけないことなので一応伏せておきます。ちょうど時を同じくして他店舗でも同様の不良が多発していたことからメーカーから正式に交換部品が支給されました。支給された部品を見てびっくり、私が治した方法とほぼ同じ部品が届けられたのです。この部品交換は私の会社では当たり前のように行われていました。

ちょうどこのパチンコ台が出た頃くらいから台枠の使い回しなどが当たり前に行われるようになり、私自身もパチンコ台のことを深く知りたくて閉店後に朝までよく分解して勉強したりしていました。パチンコ業界で働いていた時期は重宝した知識と経験ですが、やってはいけないことを必死に覚えていたわけですからあまり自慢できる話ではありませんね。パチンコの分解を始めてから1年が経つと店に設置中のほぼ全ての台の分解と修理が自分でできるようになっていました。さすがに基盤をいじったりはしませんでしたが、部品を分解してこまめに掃除をしたりといったことはよくやっていましたが、他の社員は、そんなの何の役にも立たないと、やろうとしませんでしたが、色々分解することで仕組みが理解できるようになっていたことで仕事は大いに捗ったのでした。できれば、違法ではない役に立つことを深く勉強したかったな、そんなことを思いつつ締めたいと思います。ではでは。