お金を貸してくれないと死ぬしかない その後

昨年「お金を貸してくれないと死ぬしかない」そう言いながらお金の無心にきた同僚がいました。転勤で勤務地が変わってひと月くらいの時期でした。まだその人がどんな人なのかも知らない関係にもかかわらずお金を借りにくるということは余程切羽詰まっていたのでしょう。

「来月必ず返す」は返さないということ

基本的にお金に困っている人の「来月には返す当てがある」というのは99%が口からでまかせです。その場を取り繕うのための口実。しかし頭では分かってはいても、「死ぬしかない」と言うその表情がまさに死ぬ寸前のソレに見えてしまった私は「多分返ってこないだろうな」ということを思いつつも貸してしまったわけです。しかし、予定通り翌月お金は返ってきませんでした。死ぬしかないと私に思わせたあの表情はやはり演技でした。人を騙すくらい演技が上手いというのは、使い方によっては非常に大きな武器になるのではないかと思うのですが。

困っている人にお金を渡すとどうなるか

以前働いていた職場でもお金に困っている人を何人も見てきました。人を疑うということを知らない人間だったため、そういう人に遭遇するたびにお金を貸してきました。そしてお金を貸した途端自分の前からいなくなる、そんなことを何度も経験する中で「お金を貸しても返ってこない」ということを勉強したわけです。

  • 「来月必ず返しますから」と泣きながら借りにきた従業員、お金を貸した翌日から会社を無断欠勤して、そのまま会社に来ることはありませんでした。そして連絡も取れなくなりました。
  • 「来月の給料日まで1日1枚しか食パンを食べられない」そう言いつつ体がやつれている従業員に「コレでまともな食事でも食べてしのぎなよ」とひと月分の食費を渡したところ、給料が出た途端会社を無断欠勤して、そのまま連絡が取れなくなりました。
  • アルバイト初日で勤務中に気分が悪いので休ませて欲しいという従業員、休憩所に連れていくとここ数日何も食べていないんです。そんなことを言われた私はコンビニで弁当を山のように買ってきて彼に渡しました。「食事が終わって少し休んだら現場に戻っておいで」そう言って1時間ほど経って休憩所に行くと、既に彼の姿はありませんでした。休憩所にあった他の従業員のタバコやら貴重品なんかを盗んで逃げた彼のお陰でその日はちょっとした騒動になりました。

まだまだ他にもあるのですが、こうした経験からお金にとことん困っている人にお金を渡すと、そのお金は返ってこないという次第です。

たまに更生する人もいる

「貸したお金は返ってこない」ということを身に染みて経験したわけですが、お金に困っている人にはその人なりに原因になるようなものがあるに違いない、そう思った私は次のように考えを改めました。

  1. 困っている原因をとことん話させた
  2. それはすぐに改善できることなのか、給料の使い道を当人と見直してみる
  3. その日に食べる分だけの最低限の支援はした
  4. まとまったお金を渡すと蒸発するため渡さずに生活改善を試みた

お金を借りられないことが分かると、すぐに目の前から立ち去った人も多々いましたが、その中で本当にその生活から抜け出したいと思ったAさんがいました。そのためAさんには本当に親身になって借金を完済して普通の生活に戻れるまで支援し続けました。そんなAさんですが、今でも毎年年賀状を送ってくれて近況を伝えてくれています。これまで何人にも裏切られてきたわけですが、その中でもこうして仕事を離れても連絡してくれる人がいることで、世の中捨てたもんじゃないなとも思ったりするわけです。

 

どんでん返しはラストに

演技をしてまでお金の無心にきた同僚は私の中で完全に借金を踏み倒す側の人だと思っていました。返済を催促してもすぐに自分の前から逃げ出すような人だったので、カレのことは記憶の彼方から消し去っていました。貸したお金のこともいい勉強代だと思って忘れることにしていました。

しかし、カレの演技はココで終わりではありませんでした。転勤の前日、そのカレから連絡が入りました。お金を貸したことすら忘れていたのでホイホイ呼び出された場所に行くとカレは

『今まで本当にすみませんでした。これ』

と会うや否や深々と頭を下げて封筒を渡してきました。封筒を開けると貸したお金と利子が入っていました。

『必死にかき集めたんだ。利子は1,000円しかつけられなかったけど、逃げ回っててすみませんでした。離れたら返したくなっても返せないから』

そう言いながら何度も何度も頭を下げてくれたのでした。

人を欺いてまでお金を借りる、いつものパターンだと思っていたわけですが、カレは違っていたということです。

「Aさんのこと、返さない人だと思っていましたよ。また困ったことがあったら相談してください」

そう伝えてカレとは別れました。

やっぱりカレはそっち側か

転勤で勤務地が変わって3週間が経ち、久しぶりに例のカレから連絡が入りました。

『のだめさん、一生のお願いです 500万貸してください』

『人生やり直したいんです。 30年ローンでお願いします』

返済が終わるころ、カレは80歳です。そもそも住宅ローンか何かと勘違いしているのでしょうか。電話越しでしたが、悲痛な今にでも死にそうな話し方ではありましたが、きっとまた演技なんだろうな、そう思うとやはりカレのことは信じられなくなりました。

通話中でしたが、そっと通話終了のボタンを押して、着信拒否にしました。そして電話帳からカレの連絡先を消したのでした。

まとめ

お金を貸すならあげるつもりでとはよく言ったものです。これまで何度も裏切られてきましたが、その中でも本当に更生したいと必死になっている人がいることも確か。お金は降って湧いたりはしません。私も背伸びをせず慎ましく生活していこうと思います。最後までお読み頂きありがとうございました。それでは今日はこのへんで、のだめでした。