女子プロレスラーとたこ焼き屋に絡まれて死にかけた話。
おはようございます、のだめです。
昨日、前の職場の記事を書いたところ、もう一つ書きたくなったため、今日も前の職場シリーズです。
今のパチンコ店はクリーンなイメージがわりと出来つつあるお店が多いですが、昔はパチンコ店といえば、体中に絵が描かれてそうなパンチパーマの人が店員として働いていそうな、ちょっと普通の人は立ち入れないようなイメージを持たれていました(というかそういう時代も実際にあったらしい)。
そんな時代から少し健全化されつつあった頃に私はアルバイトで働き始めたのですが、ちょうどその頃、パチンコの規制が緩和されて、いわゆる爆裂機と言われる、とてもギャンブル性の高い遊戯台の解禁と重なる時期でした。
一旦下火になりかけた業界をまた鉄火場に戻させた頃でもありました。
そういう時期にバイトでホールデビューをした私にとって、大変苦手なお客さんが何人かいました。今日はそのお客さんの話。
私が苦手だったお客さんその1、女子プロ。
最初、私の仕事のトレーニングについてくれた先輩スタッフから、
「あの人、女子プロだから気をつけなよ」
といわれました。
その女子プロと言われた人は、今風に言うと、大変ふくよかな口が達者な方で、振る舞いに多少難がある、とでも言う、そんな女性。
まぁ、いわゆる太めの乱暴なおばさんです 笑
一日中大好きな海物語を打ち続け、タバコは一日で数箱は吸う、大変ヘビーな方でした。
そのお客さんが、なぜ女子プロと言われていたかは、すぐに分かりました。
遊戯が終わって、ドル箱の玉を運ぶ際に必ず
「おいっ 箱から私の玉こぼしたらぶん殴るから」
と言うことでした。
ドル箱というのは、パチンコ玉を貯める箱のことですが、当時は一度大当たりするとそのドル箱にちょうど満タンになるほどの玉が出てきました。
ドル箱はこんな感じです。
だいたいこの一箱に大当たり一回分の玉が入る感じ。
女子プロは大当たりが続いても箱をなかなか交換せず、いっぱいに入ったドル箱の上にまるでジェンガの、あと一本抜いたら確実に倒れる・・・という状態まで玉を乗せていく人でした。
そして、ギリギリまで乗せてから次の箱を受け取る、そういう人でした。
当然ギリギリまで玉を乗せると、ほんのわずかな振動、箱を遊戯台から床に下ろす際のほんのわずかな振動でさえ耐えきれないほどの乗せ方なので、どうしても箱の上げ下げのときに玉が落ちてしまいました。
玉が溢れるのを確認すると女子プロは、
「おぃ、にーちゃん、顔あげな」と言い、溢れた玉をドル箱に戻しつつ顔を上げると、その顔めがけて拳が飛んできました。
玉をこぼすたびに、女子プロの鉄拳が飛んでくるので、誰も箱の上げ下げをしたがらず、そういう嫌な役目は新人の私に回ってくるのでした。
なので、毎日女子プロに怒鳴られ鉄拳を受けながら仕事をしていました。
今、同じことをしたらニュースになっていると思います。振り返ってみてもなんで辞めなかったのか不思議です。決して殴られるのが好きとかそういうことでは無いと思います。
箱の上げ下げで必ず殴られるので女子プロの接客は嫌でした。
そして、この女子プロに並んで、もう一人苦手なお客さんが、たこ焼き屋でした。
実際はたこ焼きを焼いてはいなかったのですが、ツルツルの頭にハチマキを巻いて、赤ら顔に仕事用の出刃包丁をぶら下げている、板前さんだったのですが、あまりに見た目がタコ顔にそっくりだったので、皆たこ焼き屋と呼んでいました。
苦手だったのは、本来ならば、出刃包丁持参で店内に入るのは、銃刀法違反とか、住居不法侵入などの法律に触れるはずなのですが、湯水のようにお金をじゃぶじゃぶと使ってくれるので、当時の上司は、「まさか流石に包丁を振り回すとかはしないだろう」ということで、見て見ぬ振りをしていました。
そんな危険極まりないたこ焼き屋ですが、ついにそのまさかの日がやってこようとは誰も思っていませんでした。
当時パチンコ店で大流行していたのが、海物語という機種。
横スクロールで魚が泳いでいき、縦か斜めに同じ魚が揃えば大当たりというとてもシンプルな台でした。
この台にはプレミアリーチがあり、そのリーチがかかると信頼度は当時100%と思われていました。
そのプレミアリーチは、リーチがかかって画面の上からサムというマッチョな男の子が降りてくると超高確率(当時は100%で当たりと信じられていました)で確変で大当たりするというリーチです。
しかし、たこ焼き屋の台で、サムが出たのに外れるという事件が起きました。
当然、たこ焼き屋は大激怒。
100%当たるリーチで外れるなんて、店が遠隔操作してんだろうと普段から赤い顔がさらに真っ赤になり、ホントたこが踊り狂っているようでした。
激怒したたこ焼き屋は、店員を呼んで補償しろと言いはります。
呼ばれてはじめは私が対応しましたが、まだ入って数ヶ月のアルバイトの身、どうすることも出来ません。
「お前じゃ話にならん、もっと上の人間連れてこい!」と怒鳴ります。
アルバイトではどうしようも出来ないので、現場主任の上司がたこ焼き屋の対応をすることになりました。
リーチでサムが出てきたのを他に見ていた人がいれば、話は変わっていたのかもしれませんが、普段から包丁をぶら下げてる人に関わろうとするお客さんはいるわけもなく
結局、誰もサムが外れるところを見ていないのですが、まさかサムリーチが外れるとは思いもしないので、上司もどうしたら良いのかわからずオロオロしていました。
それでは埒が明かないと思ったのか、たこ焼き屋はついに出してはいけないものを出してしまいます。
「手を出せ!しのごの言わずに手を出せっつってんだよ!」と言いながら上司の手をテーブルに出させます。そして、小指の横に包丁を突き刺しました。
「指、詰めろ。そうしたら、許してやる。出来ないなら俺がお前の指を詰めてやるが、どうする」と、飛んでもないことを言い出しました。
遠巻きに見ていたスタッフが流石にやばいと警察に連絡に行きます。
と、そこで上司は何を思ったのか、観念したのかとんでもないことを言いました。
「お客さんに、そんなことをさせるわけに行きません。今、すでにご迷惑をおかけしてるのに、さらに警察のご厄介にさせたら面目もありませんから」
と言った後、小指の横に刺さった包丁をそのまま小指目掛けて振り下ろしたのです。
「ちょちょちょ、おま、まま待てって!」
まさか本気で指を詰めるとは思っていなかったたこ焼き屋。出来ないと泣きを入れたところで、詫びの代わりに現金でもふんだくろうとしたのでしょうが、まさか包丁を振り下ろすとは思っていなかったのでしょう。
たこ焼き屋も慌てふためき、ギリギリ指が手から離れるすんでのところで上司の包丁を持った腕を止めたので、かろうじて上司の小指は繋がっていました。
そんなこともあり、上司は救急車に運ばれて言ったものの、不幸中の幸いとでもいうのでしょうか、無事指はくっついたままで復帰出来ました。
そんなことがあり、たこ焼き屋は、出入り禁止になりました。
いつも適当に仕事をしていた上司が唯一輝いて見えた出来事でもありました。
その一件以来、包丁を持っての来店は禁止という新ルールが入り口にデカデカと禁止事項として掲載されることになりました。
昔のパチンコ店では、こういった非日常な出来事が割と普通に起こる時代でもありました。
そんな普段は体験出来ないことを体験出来るのがとても新鮮で、その後も長らく働き続けることになるのでした。
今振り返ると、とんでもない体験ですよね。目の前でこんな事件に遭遇したら辞めてもおかしくありませんが、なぜかその事件自体があまり大きな問題にもなりませんでした。
今同じことをしたら、確実にアウトだと思います。
また、当時100%当たると信じられていたサムが外れた、という事案が全国各地で目撃されるようになり、メーカーも「サムは高確率で当たりますが、外れもあります」と言及するに至りました。
サムが出たら確変大当たり!
という文言から
サムが出たら大当たり!?
という若干曖昧さを残した表記に変わっていくことに。
この頃からどのメーカーでも100%当たり確定の演出でも、『確定』と言う言葉を避けて、「大当たりは目前」とか「興奮必至」など、どこか言葉を濁すようになった感じがします。
ネットが今ほど普及していない時代だった(i-modeの時代)ので、情報を手に入れる術が殆どなく、メーカーも火消しに躍起になると言うこともそんなに無かった気がします。
現代は情報社会ですので、こう言う自体が起これば1時間もあれば全国に知れ渡ってしまいますから、一度炎上すると鎮火は長引くのでそう言う背景もあって、文言にも相当気を遣っていると思います。
それでは、今日も一日そういうとんでもない出来事に遭遇しないことを願いつつ、素敵な一日を過ごせますように、のだめでした。