酒は飲んでも飲まれるな。酒と男とギャンブルと女。
おはようございます、のだめです。
先日の週末に会員制のホテルに宿泊した記事を書きましたが、その時一緒に行った知り合いが食事のときに
「今日は飲もうかな」
と言ったのです。この知り合いとは中学の頃からなのでもう20年来の付き合いのあるやつですが、一度も食事で酒を飲んだことを見た事がなかったので、ビックリしました。
今でもお酒はあまり好きではなく、カクテルなどの甘いお酒しか飲めないそうですが、飲めるようになっていたことに少しビックリしたのでした。
今ままで飲みたいと思わなかったのと、飲んでも美味しいと思えなくて自分からは飲まないようにしていたそうですが、婚約者が大酒呑みらしく、食事のときに一緒に飲んだら殊の外楽しい時間を過ごせたようで、以来たまにはいいかと飲み始めたようでした。
そんな素敵な時間を味わいつつ、部屋に戻ってきた私は、ふと前の職場でお客さんとしてきていた、はるみちゃんを思い出してしまいました。
今日は、そんなはるみちゃんのお話。
私が、まだアルバイトから社員になりたての頃なので、今から15年ほど前の頃でしょうか、旦那さんとはるみちゃんはいつも2人で遊びにきていました。
はるみちゃんは少しぽっちゃりめの可愛らしい感じの人でした。
芸能人で言うと、ライザップを始める前の佐藤仁美さんのような見た目でとても愛嬌のある子。
旦那さんは自営業をしていて、朝の仕込みの後、お昼時、夜の仕事の後と暇さえあればお店に来ていたので、パチンコが大好きだったのだと思います。
奥さんのはるみちゃんはと言うと、パチンコは初めはあまり好きではなさそうでしたが、旦那さんが毎日来るので、それにくっついてくるというかんじ。
なので、はるみちゃんは旦那さんがパチンコに熱狂する間、横で打たずに旦那さんの台を眺めていたり、休憩所で雑誌を読んでいたり、また旦那さんの席に戻っては居眠りをしたり。旦那さんの遊戯が終わるとまた手を繋いでお店を出て行く、そんな仲が良い夫婦でした。
そんな時、お子さんの妊娠を機にはるみちゃんはお店にこなくなりました。
そして、子供が生まれると旦那さんもパチンコよりも子供が可愛いようでだんだんとお店には来なくなりました。
お店には来なくなりましたが、店の軒先で旦那さんが店内を眺めている姿を何度も目にしていたので、
本当はパチンコやりたいんだろうなぁと思っていましたが、子供が出来て以来旦那さんはお店に入ることはしませんでした。
しかし、そんなある日、たまたまお店の入り口から店内を眺めている旦那さんを見つけたので、どうしたのですか、と尋ねると
「うちのはるみ、来てない?」
と、言われました。もともとあまりパチンコが好きではなさそうだったので、居るわけがないのですが、それからも度々お店の入り口から店内を見つめる旦那さんを見かけました。
そう言うことを言われてからも何度も店の入り口から店内を見つめる旦那さんを見かけていたので、
「何か、あったのですか?」と家庭の事情に踏み入るのは良くないこととは思いつつも、気になり聞いてしまいました。
「はるみ、最近育児ノイローゼみたいでさ。夜になるといつもふらふらと出かけて言っちゃうんだ」
ちょっと深刻な事情のようでした。
そんな事が半年ほど続き、旦那さんの姿も見かけなくなった頃、お客さんから又聞きで旦那さんとはるみちゃんが離婚したと聞きました。
どう言う経緯で離婚したのかは、本人にも聞いていないですし、お客さん情報でしかないので全く分かりませんでした。それから二人のことはお店でも街でも見かけることはなくなり、自分も二人のことは忘れてしまいました。
そして、7、8年が経ったある日、お店の駐輪場で、警備員と話をして居る女性をたまたま見つけました。
髪の毛はボサボサで、泥酔していて、端から見たらあまり関わりたくない人なんですが、雰囲気が自分の知って居る人に大変似ていて思わず
「もしかして、はるみちゃんですか?」
と言ってしまいました。「ウェーイ」ともう千鳥足でケラケラと笑いつつ答えてくれます。
はるみちゃんでした。
自分の知っていた頃とは似ても似つかない風貌になっていたので、そこで会わなかったら、気がつかなかったでしょう。
少し話を聞いてみると、
育児ノイローゼになって、夜ふらふらと徘徊をしているときに、たまたまお酒を飲んでみたところ、気分が良くなって、嫌なことを忘れる事が出来たことから、お酒を飲むようになっていったそうです。
それ以来、毎晩飲むようになり、晩酌ではすまなくなり、昼間でも飲むようになってしまったみたいでした。
自分と同じ年代の女性とは思えないような、ヨレヨレのシャツにスウェットパンツ。
彼女の方も、バイトだった自分のことを覚えていてくれて「おい!のだめ!偉くなったなぁ。出る台教えろって〜 へへへ」と言い寄って来ます。
自分のことを覚えていてくれるのはとても嬉しいですが、完全に酔っ払っているので、良い感じの絡み具合です。
その日以来、お店にちょくちょく顔を見せるようになり、従業員とも話をするようになり、ごくたまにパチンコをする姿も見かけるようになりました。
「今日は支給日だから、パチンコが打てる」
と言っては、お店に入ってきます。
はるみちゃんは、見た目はいつもヨレヨレのシャツにスウェットパンツでカバンなどは持っていません。軍資金はいつも「ブラ財布」です。
ヨレヨレのシャツに腕を突っ込んで、ブラジャーの中をゴソゴソやってお金を取り出す姿は、『そう言うお店じゃないと見れないんだろうな』と思える姿でした。
パチンコ店にとって、店に危害を加えないお客さんは、大切なお客さんです。
はるみちゃんも同じく、大切なお客さんでした。
軍資金がどこから出ているかなんてのは、自分たちの関知するところでは無く、マナーさえ守ってくれれば、それ即ちお客様です。
お店に頻繁に通うようになると、当然お金も必要なわけで、保護だけではやれなくなったのでしょうか。
また、一時期お店に来なくなりました。
さらにそこから1年ほどが経ちました。
「のだめちゃぁーん」
と声をかけられて振り向くとはるみちゃん。
横には男性が。
「コレ、私の今の彼氏」
と男性同伴で来店でした。
顔がどことなくはるみちゃんに似ていたので、彼氏ではなく息子さんだと思います
晴れて親子でパチンコデビューとなりました。
息子さんとパチンコに来るようになってから、お酒をあまり飲まなくなったのか、泥酔での来店は減りましたが、ブラ財布は健在でした。
私がパチンコ店で働き始めたときに見たはるみちゃんは、いつもお店を出て行く時は旦那さんと手を繋いで帰っていましたが、
それからは、息子さんと同伴で来店しては息子さんと一緒に帰るようになりました。
はるみちゃんを変えてしまったのが、お酒なのかパチンコなのか、それとも育児ノイローゼなのか、私には正直分かりません。
ですが、お酒にしても、パチンコにしても、いつも言われるのは、お酒は飲んでも飲まれるな、パチンコは適度な遊びということです。
今、国会ではカジノに関する法案が可決されたりと、国家でギャンブルが合法化されつつありますが、お酒にしてもギャンブルにしても、節度のある嗜みが求められていくものだ、ということだと思います。
会員制ホテルに連れてきてくれた知り合いにも、お酒は飲んでも飲まれるような人にはなってほしくないなぁと思うのでした。
※当時のはるみちゃんの息子さん、私の知る限りでの情報ではどう計算しても18歳になりません。そもそも15年しか働いていなかったので。
そういうわけで、お酒に飲まれない、ギャンブルにのめり込まない、素敵な一日を今日も過ごせますように、のだめでした。