どこで食べても同じ味というチェーン店で起きた感動の思い出。天下一品ラーメン。
天下一品というラーメン屋をご存知でしょうか。独特の味わいから味の好みがはっきりと分かれるラーメンかもしれません。味噌でも醤油でもとんこつのどれにも当てはまらない、こってりという言葉がもっとも当てはまるラーメンと言えます。
お盆で九州から岡山に戻り嫁さんといきつけのパン屋に寄った帰り道、たまたま天下一品を見つけました。
「天下一品かぁ、懐かしいなぁ」
懐かしい、そう、懐かしいということばが一番しっくりくるな、と思いました。
私が天下一品に出会ったのは、今から遡ること約22年前の大学生の頃。当時私は東京の江古田の学校に通っていたのですが、学校の近くにこの「天下一品」はありました。
当時の天下一品は、メニューが大変シンプルで
- こってりラーメン
- こってりチャーシューラーメン
- ライス(中・大)
これだけだったように思います。餃子はあったかもしれませんが、当時は頼んだことがないのであったかどうかは不明です。
※現在の天下一品はらーめんだけでも7種類、単品メニュー、ごはんもの、酒類とラーメン屋というよりかは餃子の王将のような中華料理に近い店舗のほうが多いかもしれません。
もともと江古田は学生の街ということもあり、ラーメンなんかも500円出せばそこそこ美味しいラーメンが食べられた時代、天下一品のラーメンはそんな貧乏学生には少し贅沢なラーメン屋だったと言えるかもしれません。たしか600円〜650円くらい。
とはいっても学校の隣ということで、学生証を提示すると大ライスが無料で食べることができました。食べ終えたラーメンの残り汁にライスをぶっ込んで食べるのがここのお店の定番の食べ方でしたが、今も同じなのでしょうか。
学生の頃はその600円ですらちょっとした贅沢品だったため、月に1度のバイト代のご褒美で食べに行っていたような記憶があります。
そんな学生の頃に食べた天下一品のラーメンですが、学校を中退して社会に出るとめっきり行くことはなくなりました。
2016年ごろ、仕事で車を運転していたときに、見慣れた看板を見つけ、たまたま食べたのが天下一品でした。このときは学生のときに食べた天下一品と同じラーメンとは思いませんでした。似ている店名のラーメン店は数多くあるので、ここもそうだと思ったのです。
『そういえば学生の頃食べた天下一品のラーメン、美味しかったなぁ』
そんなことを思いながら、注文したラーメンを口にすると、その味は学生の頃に食べたラーメンと全く同じ味でした。
【ラーメンを食べて思わず涙が出る】
そんな経験、あるわけないと思うかもしれませんが、このときの私はラーメンを食べながら、あまりの懐かしさに泣いていました。
学生の頃の思い出が脳裏に蘇ってくるのと合わせて、当時のなけなしのバイト代を握り締めて食べに行っていた自分を思い出しながら食べていたあのラーメンの味を今、もういちど食べているという出来事がとても嬉しかった思いがあります。
そんな素敵な経験をしたおかげで思わず天下一品の問い合わせフォームに次のようなメッセージを送信していました。
前略
学生の頃、毎月天下一品のラーメンを食べに行くのが自分にとってごちそうでした。バイト代が出るとまっさきに食べに行っていたのが天下一品のラーメンでした。そんな学生時代から約16年、今日たまたま営業にきていた帰りに「天下一品」の看板を見つけ、懐かしさのあまりお店に入りました。
学生の頃に食べた懐かしい味を、今日またここで味わえるとは思いませんでした。これからもまた食べに行きます。
すると、数日後に天下一品から返事が。
平素は天下一品をご愛顧賜り厚く御礼申し上げます。
のだめ様には、長年にわたり私どもをご贔屓いただき、誠にありがとうございます。早速ですが、私どもでは、全店舗において常に均質な商品をご提供させていただくことを務めと考え各店舗へと指導しておりますだけに、今回のご連絡を大変うれしく拝読いたしました。
頂戴いたしました内容は、弊社営業部へと申し伝えると共に、暫くぶりにお召あがりいただいたお客様にも、のだめ様のように良い思い出と共に味わっていただけるよう、ますます精進して参りたいと存じます。
尚、私どもではお客様よりお寄せいただくご意見を、店舗指導を行う上で、貴重な研究材料として受け取らせていただいております。
今回、ご連絡を頂戴できましたことに心より感謝いたしますと同時に、今後とも天下一品をお引立て賜りますようお願い申し上げます。
天下一品FC本部
株式会社天一食品商事総務部○○(2016.2.6)
チェーン店のどこでも同じ味というのはあまり好きではなかったのですが、この天下一品の一件以来どこでも同じ味が食べることができるというのはとてもありがたいことなのかもしれない、そう思ったのです。
チェーン店に対してオリジナリティがないとか、独創性がないなど批判的なことをいう方もいるかもしれませんが、どこでも同じ味というのはなかなか出来るものではない、そう思います。私自身15年経ってから当時の味を思い出すことになろうとは思ってもみませんでした。ですからどこでも同じ味が食べられるというのはある種のオリジナリティなのでは、と思うのです。
そんな出来事からさらに5年、今日たまたま天下一品を見かけたことから20年前の学生時代の出来事、5年前の感動の出来事の両方を思い出したのでした。
今日はご飯を食べた後でしたので立ち寄れませんでしたが、近いうちに天下一品のラーメンを食べに行こうと思います。