4月15日の港湾ストライキについてまとめました。

こんばんわ、のだめです。

4月15日に全国の港湾にてストライキが敢行されました。平日のストライキは22年ぶりの実施となり、業界関係会社ならびに港湾に携わる関係者の間で終日ざわついた1日となりました。

港湾に出入りする運送会社などはストライキによる影響をもろに受けるため実施の事前・事後処理に追われることとなりました。

現場は大混乱で悪い意味で大きな盛り上がりとなったわけですが、不思議なことにテレビではほぼ全くこれに関しての報道がなされることはありませんでした。

「物流が止まるかも」という大きな事案にも関わらずニュースにならなかったことが大変不思議に思い、一度このストライキに至るまでの経緯について整理してみようという思いから今回の記事に至りました。

4行で時系列を知る

今回の港湾ストライキを4行で超ざっくり説明するならこんな感じです。

(ざっくりすぎていろいろ誤解を招きそうですがここはご容赦ください)

労働組合最低賃金を上げてくれ!回答しないならストやるぞ!

日港協 :回答拒否。ストやるならどうぞどうぞ

労働組合:スト敢行(4月14日、15日)

労働組合:GWもストやるぞ!←いまここ

4行で表すと大変ざっくりなのですが、ここに至るまでの経緯は実は数年前に遡り、事情はかなり複雑になっております。

平日ストライキ実施までの経緯

ストライキは全国の港湾労働者が作る労働組合が主導となって実施されました。

  • 最低賃金を見直して欲しい
  • 労働環境の改善(土日出勤など)

働き方改革と政府主導で様々な試みが行われておりますが、全ての職種が改善されているわけでは無く、港湾労働者に至っては全職種水準よりも低い賃金や労働環境で働いているというのが現状かと思われます。

時系列で見てみると時は2015年まで遡ります。

  • 2015年 港湾労働者の作る労働組合2団体と日本港湾協会(会社側の団体 以下日港協)との間で最低賃金についての交渉が行われた。

春闘を前に日港協側が、最低賃金について回答することは「独占禁止法に抵触する」恐れがあるとして回答を拒否。労使交渉の結果164,000円で妥結となる。

  • 2016年 日港協は独禁法を盾に回答を拒否 専門委員会で協議することには合意

専門委員会で16年度の引き上げは行わず、15年春闘で合意した最低賃金額を、17年春闘においては地域ごとの最低賃金の引き上げ水準(3%程度)を加味して引き上げることを確認した

  • 2017年 前年に合意したにも関わらず日港協は回答を拒否したため、個別に企業間で産業別最低賃金を164,000円から3%引き上げ169,200円とすることを確認。この金額を産業別最低賃金とすることを日港協に承認を求めるも合意に至らず

2018年 日港協は回答拒否に拘り合意には至らず 中央労働委員会(中労委)にあっせん申請を決断

以上がストライキ実施にかかる背景となります。

話し合いが平行線をたどったため、第三者委員会である中央労働委員会(学識者・会社側代表・労働者側代表で結成する委員会)にあっせん案を申請することとなりました。

中央労働委員会によるあっせん案は以下の通り

団体交渉における使用者の行為は、独占禁止法上の問題にはあたらないと『解される』ため、最低賃金について真摯に話し合いの場を持ち解決に努めるように、との判断が下り、日港協の”独占禁止法に抵触する恐れがある”という申し出を退ける判断といえる

日港協の主張とこれに対する労働組合の反論

これにたいし日港協は次のような主張を行います

  1. あっせん案にかかる報告書は、独占禁止法上の問題とならない旨の明確な記述がない
  2. 報告書は、あっせん委員の一方的な解釈である
  3. 報告書は、独占禁止法上の問題がないとするのは当然のこととして踏み込んだ記載がないため、公正取引委員会に対する免罪符にはならない
  4. 中央労働委員会独占禁止法上の問題とならないとしても、中央労働委員会自体がその言葉に責任がないという判断した
  5. 報告書は、独占禁止法に抵触するといった疑義を完全には排斥したとは言えない

このような日港協の主張に対して、労働組合がは次のように反論します。

1.独禁法上の問題とならない明確な記述がないことについて

そもそも報告書の目的は、従来型の明確な雇用関係のもとでの働き方(労基上規定される労働者・働き方)に加えて、現在様々な働き方が生まれている状況において、これらを独禁法上どのように解釈するかに主眼を置いた検討結果であり、従来型の典型的な労働者は独禁法上の事業者には当たらず、当然問題にはあたらないことが報告書に記載されていることから、企業と雇用関係を持ち、その指示のもとで働く労基法上の労働者は独占禁止法上の問題にならないことが前提であるため、当然問題とはならない

2.あっせん委員の一方的な解釈である

これについては、一方的な解釈では無く、「公正取引委員会が示した解釈と見解」を中央労働委員会が引用しており、一方的解釈には当たらない

中央労働委員会は、学識者・経営側・労働側の代表で組織する第三者委員会であり、3者の合意のもと解決案を示しており「一方的な解釈」が出来る余地はない。これを一方的解釈として切り捨てるのはいかがなものか

3.公正取引委員会に対する免罪符にならない

日港協が指摘する「明文化する必要がなかったという解釈が示されるにとどまる」ことについては、報告書を読めば独禁法上の問題にならないことは自明の理である

また中央労働委員会は、労資紛争を解決し良好な労使関係を作るための機関として存在し、独禁法の解釈に踏み込む立場にはないが、その目的のために公正取引委員会の報告書を根拠にあっせん案を示したわけであり、これを否定するということは日港協が公正取引委員会の見解を否定する立場に立っているということになる

4.中央労働委員会自体の言葉に責任がない

中央労働委員会を無責任と非難していることとなり、非常に失礼なことである

昨今の森友問題や統計問題などの隠蔽や改ざんといった政府機構の無責任さは上げられるとしても、労働委員3者が紛争解決のためにあっせん案をとりまとめた中央労働委員会に対して「言葉に責任がない」とするのは失礼極まりない

5.独禁法に抵触するといった疑義を完全には排斥していない

独占禁止法違反ではないがその「恐れがある」というはなはだ曖昧な主張にこだわり続け労使交渉を拒否し続けているが、労使交渉が独禁法に問われたことは一度もないこと

国会議員を通じて公正取引委員会にヒヤリングを行い

  • 独禁法に抵触しない
  • 必要なら団体交渉の席で説明の場を設けても良い

という返答があったことから、最低賃金の交渉と回答が独禁法に抵触しないと指摘し続けてきたが、「グレーだからリスクがあることはできない」と言い続けている。

にも関わらず日港協は「交渉は大事だ」、「労使協調でいきたい」と発言している。

公正取引委員会との聞き取り結果を伝えると「事務局の勝手な解釈」と一蹴

中央労働委員会のあっせん案提示については「免罪符にならない、責任がない」と拒否

これでは言っていることと行動が伴っていないとしか考えられない

わかりにくいのでざっくりまとめると

労働組合と日港協のやりとりを見ていると、どうしても日港協が駄々をこねて回答を拒否しているようにしか受け取れないのは過言でしょうか

このやり取りについては、書類を読めばおよそ理解はできる内容なのですが、説明がまどろっこしいので、あえて簡単に記すと次のようになります。 

  • 1.そもそも報告書は、独占禁止法上に抵触しないことが前提なので、明確な記述がないとする回答は詭弁である
  • 2.報告書の内容は、公正取引委員会の見解を引用しているため、一方的な解釈には当たらない
  • 3.日港協が回答を拒否するために、公正取引委員会の見解を否定しているため、「免罪符にならない」のではなく「免罪符にしたくない」と受け取れる
  • 4.学識者・会社側・労働者側と3者による中央労働委員会の見解にたいして言葉に責任がないというのは委員会を愚弄している
  • 5.公的には「交渉を大事にする」「労使協調」と口にするが、「一方的な解釈」「言葉に責任がない」と回答を拒否し続けている。日港協自らが労使関係を否定しようとしているとしか考えられない

以上が港湾ストライキにかかる経緯となります。

ニュースにならなかった理由を考えてみた

ストライキが起きたことで現場が大騒動となったにもかかわらず、どの報道局も大々的にストライキについては報じませんでした。

唯一15日(月)のストライキについては、平日にストが行われたということで”22年ぶりに平日スト”という形で少しだけ報じられる程度でした。

現場では大変な盛り上がりを見せた今回のストライキですがどうしてメディアではこれを取り上げなかったのでしょうか。個人的な見解を少し。

①消費者に対する影響がほとんどなかったため

今回のストライキ実施に向けて会社側はストライキ実施に備えて、日曜日・月曜日の荷役を週末までに変更するなどのスケジュールの変更を行っていたため、実質的な混乱は想定内で留まると予見できたため、国内流通においても実質的な混乱はそこまで大きくはなかった、ということです。

ですが、今回のストライキで大手通販サイト(アマゾンやアスクルなど)では、ストライキの影響で発着がずれるかも、という告知を出していました。

②政治家が介入していた

物流が麻痺ということになると、全校各地が大混乱になることが予想出来るため、政治家がメディアに圧力をかけて報道協定を結んだのではないかということ。

実は現場ではこれが大きな理由ではないかという意見がかなりありましたが、真偽のほどは不明です。

③いち組合と会社側の交渉ごとだったから

今回の港湾ストライキについて色々調べる中で、スト実施に至る経緯を知り、双方の意見を読み解いていくと結局は双方の意見のすれ違いということが分かりました。いち団体の揉め事をニュースとして報じることでもないのかも、とも思いました。

自分の見解を3つ述べましたが、①消費者に影響が出ないと予見できたのが大きな理由ではないかと思います。

まとめ

現在、ゴールデンウィーク中のストライキを計画が発表されています。メディアでは10連休について早くも盛り上がりを見せていますが、10連休中に港湾ストライキが実施されるとどうなるのでしょうか。

日本は島国です。多くの食べ物や原料、資材など多くのものを輸入に頼っています。

むやみに不安を煽るようなことは言いたくはありませんが、GW中の10日間全国の港湾でこうした外国の輸出入が止まると、それこそ日本は大混乱することとなるかもしれません。

トラックでは国内流通はまかなえますが、外国とのやりとりはどうしても船に頼らざるを得ませんから。

運送という形で私も港湾部とは関わりがありますので、今後もこのことについては注視していきたいと思います。

 

今回は、現場は大混乱になっているにも関わらず報道されなかったため、まとめました。何かの参考になれば幸いです。

 

それでは、明日も素敵な1日になりますように、のだめでした。