物流クライシス 続報

こんにちは、のだめです。

数日前に、ダンボール古紙の値上げが続いていて、年末にモノが運べなくなるかも?という記事を書きましたが、本日はその続報。

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ダンボール古紙が最高値を更新

11月10日の日経新聞で「ダンボール古紙が最高値」という記事。

ダンボール古紙の11月輸出価格が過去最高値をつけました。過去最高値となった2017年7月(27.7円/kg)を上回り、29.5円/kgとなりました。

こちらの主な原因は、先日の記事にも書いたとおりですが、中国向けの輸出が一気に増加したことが挙げられます。

中国では、古紙ダンボールの輸入に年間1800万トンという制限を設けています。これは昨今中国内で問題視されている環境汚染問題にも絡んでいるためと思われますが、今年の輸入量が1〜9月ベースで1153万トンになっています。

年間の1800万トンの制限枠内に収まっていますが、現在中国国内での需要と供給のバランスは取れていないのが現状で、残りの2ヶ月で制限いっぱいの約650万トンを駆け込み輸入するものと思われます。

日本の古紙ダンボール輸出会社にとっては、高値で取引されるのでウハウハが止まらないのでしょうが、問題はそこではありません。

中国への輸出が増えた理由

中国ではもともとダンボール古紙の輸入は米国から行なっていましたが、中国内での環境汚染問題が引き金となり、不純物の混じった古紙ダンボールの輸入に制限をかけることとなりました。

これまでダンボール古紙のお得意先だった米国の古紙は、不純物の割合が大変大きく、新たに制定された基準では不純物の制限を超えてしまい、米国産の古紙ダンボールの輸入が困難になりました。(2018年3月:輸入品の規制強化のため)

こうしたことが背景にあり、米国産のダンボール古紙は5月に一時輸入禁止となります。さらに、米国と中国が繰り広げる貿易戦争の報復合戦で、中国は米国の古紙に25%の追加関税をかけることとなり、さらに米国からダンボール古紙の輸入が困難となっていきました。

そんな中で、主力となっていた米国からの輸入ができなくなったことで、中国内のダンボールの供給量は追いつかなくなります。

そこで、品質も米国より数段高い日本から輸入すればいいということとなり、日本国内でだぶついていた在庫をごっそりと中国向けに輸出されることとなったわけです。

実際に日本から輸入してみると、米国に比べて距離も近いので、輸入にかかるコストを大幅に削減できることがわかり、さらに日本の需要が高まります。

そういうわけで、日本国内では飽和状態だった古紙ダンボールが一気に中国へと輸出されていくこととなった次第です。先日記事にしたときも、今後この状態は続くだろうと予想しましたが、案の定輸出向けのダンボール古紙の価格は上昇を続けており、最高値を更新することとなりました。

日本から大量にダンボール古紙を輸入している現在ですが、まだ年間の輸入制限量には届いていないため、駆け込み需要も含めて年内は中国向けのダンボール古紙の輸出は続くものとみられています。

国内でも値上げの動き

 当然中国向けの輸出が激増したことは日本国内でも大きな影響がありました。

国内で抱えていた余剰在庫が一気になくなってしまったことで、国内流通用のダンボール原紙の価格が上昇することとなりました。

国内価格も前月比0.5円/kgの上昇。

なんだ、たった0.5円なの?と思われるかもしれませんが、価格が1円高くなると、それにかかる費用は1億円高くなると言われているので、0.5円の上昇ということは、前月比で5000万円の費用増加ということになります。

しかも、国内価格は4ヶ月連続で値上げが続いており、今後も価格は高止まりすると予想されるので、原紙メーカーにとっては大変な痛手となるわけです。

こうした値上げが続いたことで原紙メーカーはダンボールの値上げを決めました。

11月出荷分から各社10%〜25%の値上げを発表しています。

ダンボールの原料となる古紙が不足したことにより、ダンボール自体の総量が減り、ダンボールの需要が高いので、高値で原紙を買うこととなり、原紙メーカーは現在大きな収益圧迫要因を抱えた状態と言えるでしょう。

今年の年末は大丈夫?

そして、出荷されるダンボールの値上げ分10%〜25%の上昇分は、小売店などの様々な業種の企業が負担することとなります。各企業の物流費がこのダンボール価格の上昇により、原紙メーカーと同様に収益圧迫要因となるのは間違いありません。無駄なコストをギリギリまで切り詰めて、価格を維持する企業もあるでしょうが、値上げ幅が大きいため、商品を梱包する費用がかさんだことを理由に、顧客に費用を転嫁するところも出てくると思います。

昨年宅配最大手のヤマト運輸が、一連の人手不足により運送費の値上げを実施しました。現在ヤマト運輸をはじめとした運送業界全体で、人手不足に対応するべく人工知能(AI)の導入で業務を効率化や省人化を計っていますが、それでも転嫁出来ない場合は今後も運賃の値上げという形で、荷主にはさらに大きな負担になると懸念されています。

ですが、モノが運べるうちはまだ良いとも言えるかもしれません。

ダンボールの需要と供給のバランスが崩れている現在、ダンボールの需要が減るということは今後も考えにくいため、原料不足によって供給量が減ることで『梱包できない荷物が出てくる恐れ』があります。

こうなると、商品もある、商品を運ぶ手段も準備出来ている。しかし、商品を梱包できないので運べない、というリスクが考えられるわけです。

まとめ

年末年始にかけて様々な業種で運ぶものが増えると予想されますが、現状を考えると商品を運ぶ梱包材、ダンボール価格の上昇によって費用増加が懸念されることから、顧客負担の金額が上昇するリスクは高まったと言えると思います。

テレビCMなどで、送料無料などと謳っている企業もありますが、ダンボール価格の上昇により今後は「送料無料」というCMなんかは減っていくかもしれません。もしくは消費者にはわからないように価格に転嫁されることとなるかと思います。

というわけで、現状では運賃コストの上昇による消費者に対する価格上昇というケースは考えられますが、商品が運べないという最悪のケースはまだ考えにくいと思います。

今後もこれに関する記事や報道があれば再度検証したいと思います。

 

それでは、今日も素敵な1日になりますように、のだめでした。