物流クライシス モノはあるけど運べない!? 年末商戦に暗雲か

おはようございます、のだめです。

先週日経新聞で少し気になる記事を見つけました。さっそくNHKがその記事に近い内容の特集をニュースで取り上げていました。他局のニュース番組では似たような報道が出てこないので、現状ではそこまで大きな問題にはなっていないと捉えているのかもしれません。今回は、「物流危機、モノはあるのに運べなくなるかも」というお話。

発端

毎日の日課と仕事を兼ねて、日経新聞を朝刊夕刊地方記事をひととおり目を通して、気になる記事については、スクラップファイルに保存、ということを毎日行なっています。今回は、それが役に立つ形となりました。他の新聞をここまで毎日読みまくった経験が無いので、日経新聞について言いますと、大ごとになりそうな事件や事象は、突発的に発覚して大事になる場合と、大きく報じられる前にいくつか段階を踏んで記事が注目されるようになるものと2つあると思っています。1つ目は、突発的に発覚して取り上げられた記事。ほとんどが何かしらの不祥事や事件が発生した時に出る記事です。

そして2つ目は、いくつかの段階を踏んでいき最終的に大きく取り上げられる記事です。序盤は小さい記事で取り上げられることがおおく、それが少しずつ注目されてきて、最終的に特集記事として取り上げられるといった段階を踏むものです。

今回注目する記事についても、後者の段階的なものでありつつ急展開してきたため、今後さらに注目を集めそうだと感じました。

中国と米国との貿易戦争勃発

10月31日の日経新聞で国内の古紙が中国に爆買いされると報じました。

米中貿易摩擦の余波で、国内の段ボールが不足する懸念が広がっている。中国がダンボールの原料となる古紙の調達先を米国から日本に変え「爆買い」したことが原因。(中略)ハイペースな輸出が続く中、需要期の段ボールが不足し物流が混乱する事態が現実味を帯び始めた(日経新聞10月31日朝刊「真相深層」より一部抜粋)

ざっくりと古紙爆買いを説明すると次のようになります。

現在中国は米国との貿易戦争により、お互いに高い関税を掛け合っているため、中国と米国間でモノの流れが実質的に停滞している状態です。

米国から仕入れていたものが手に入らなくなった分を他国から調達しなければならず、古紙については日本がターゲットとなりました。そのため、日本国内の古紙をごっそりと中国が買い占めたため、日本国内での流通量が大幅に不足する事態へと発展しつつあります。

中国環境規制問題

今年のはじめに中国は国内での環境問題規制に伴いプラスチック製品や古紙などに対して輸入規制を行いました。古紙については、輸入する古紙に含む不純物の割合を厳しくすることで輸入規制を行いました。その結果、日本も中国向けの古紙の輸出量が大幅に減ることとなりました。

古紙業界が中国向け輸出に苦悩。中国は3月に輸入する古紙の不純物の割合を厳しくした。それにより中国向けの古紙輸出が停滞することとなり、4ヶ月連続で輸出が断念。現在少しずつ中国向け輸出は改善されつつあるが未だ厳しい。国内原紙会社に打診するもいずれも感触は薄い(6月14日日経新聞より一部引用)

一番の輸出国だった中国では、廃プラスチックや古紙といったリサイクル品の汚染による環境問題がクローズアップされたことにより、一時リサイクル資源の輸入が止まることになりました。プラスチック製品に関しては現在も規制がかかったままで古紙以上に問題は深刻で、日本国内のプラスチックゴミは飽和状態が続いています。

こうした背景があり、古紙業者は、原紙メーカーにもっと古紙を買ってくれと打診しますが、原紙メーカーはそれを断ります。

原紙会社A「今、いっぱいだからさぁ〜 おたくでなんとかやってよ てへ」

原紙会社B「だめだめだめ!増産予定ないから、海外に輸出すればいいじゃないか」

そんな感じで断られ続けます。古紙業者は、資源が溜まっていく一方で、どこも買ってくれないので、保管量の飽和状態が限界に近づくこととなりました。

規制、一部解禁へ

古紙を取り巻く輸出難航が緩んできたのは、8月に入ってから。中国は環境対策を目的に輸入規制を実施してきましたが、中国国内の古紙資源が不足し、現地価格が高騰し始めました。 そのため、中国は日本からの古紙輸入を再開することになります。

もともと日本では、リサイクル品などの分別回収が浸透している社会でもあり、古紙自体も不純物の割合が低いこともあり、現在の規制値よりは高いものの米国などに比べればはるかに高品質ということもあり、中国向けの輸出が少しずつ増えていくこととなりました。

中国向けの輸出が再開したことで、古紙業者が抱える飽和状態の在庫は少しずつ減ると思われましたが、結果として「少しずつ」ではなく「爆買い」へとつながり、今度は日本国内の古紙流通量が急激に減少しはじめたのです。

こういった背景もあり、

日本国内の在庫が減れば国内メーカー向けの販売価格に上昇圧力がかかりそうだ。(日経新聞8月16日より一部引用)

以上のように、中国向けの輸出が再開したことで、今度は国内向けの流通量が減る懸念もありました。

嫌な予感は的中し、国内での原紙価格は高騰します。

ダンボールに使うダンボール原紙の値上げが相次いでいる。製紙大手は価格を10%〜15%値上げすることを決めた。中国の大幅な需要増により中国向けの輸出価格が上昇、国内流通分が減ったことで国内の流通価格も相次いで上がる結果になった。このまま続けば箱自体の値段に転嫁され、様々な日用品や消費財、サービスの値上げにつながると懸念の声(日経新聞10月5日より一部引用)

中国への古紙輸出が実質的に解禁状態になったことで、古紙の価格が急激に上昇しました。国内流通に流すより輸出した方がはるかに利益が上がるため、古紙業者も当然輸出を選択します。

原紙会社A「ばかやろー!輸出ばっかりしないで、国内にもっとまわせ!」

原紙会社B「そんなに海外に古紙回すなっつってんだろが!」

古紙業者「雨の日に傘を取り上げるあなた達に文句を言われる筋合いはない!」

原紙会社A&B「うぐぐ・・・」

ざっくり状況を表すと現在は上のような感じとなっています。

そして、中国だけではなく、東南アジアでも輸出が増えはじめました。

ダンボール箱の材料となる原紙の輸出が増えている。東南アジアでのダンボール工場の新増設が加速。日本に比べて採算が高いことも輸出増加につながっている。依然中国への板紙需要は旺盛。海外では日本に比べ原料価格の上昇を早めに製品の販価に反映させる商習慣があり、転嫁が早く出来るアジアは売り手にとって好条件。暦年ベースで過去最高になる可能性もでてきた。(日経新聞10月23日より一部引用)

国内の需要量を大幅に上回る量を日本を取り巻く諸外国での需要が爆発していて、外国に売ってしまった方がはるかに利益が大きいことから、どんどん輸出が増えることになります。

原紙会社A&B「あわわわわ・・・やばいよやばいよ」

古紙業者「起死回生の復活で右肩上がりです」

f:id:heyaganodame:20181103194828p:plain古紙「爆買い」ダンボール危機

ここまでの経緯を時系列に並べるとこんな感じです。

2018年3月 中国、環境規制問題によりリサイクル資源に制限、輸入が困難に

2018年5月 中国、米国の古紙は品質が悪いと輸入を一時的に禁止

2018年8月 米国、中国に対して高い関税をかける(5月の報復として)

2018年8月 中国、米国に対抗して古紙に25%の報復関税をかける

米国からの材料の仕入れが出来なくなり、困った中国は日本に対して規制を緩和。日本から古紙輸入を決める。

中国「日本の古紙品質めっちゃいいじゃん!爆買いじゃ!」

日本「国内では売れないのでどんどん買ってください!」

そのため、中国からの爆買いにより日本国内の古紙の在庫が大幅に減少した。

以上のような経緯があり、中国向けの古紙は輸出価格が一気に高騰しました。今年のはじめ、1月の輸出価格に比べて約40%以上も高値で取引されています。中国に売れば国内よりもずっと高値で売れるわけですから、中国に売る気持ちもわかります。

国内原紙メーカーは、このような市場状況のため、原紙が高騰することとなり、原紙価格を値上げすることになりました。

古紙業者は、取材で次のように述べていました。

古紙が余っているときは誰も助けず、輸出でしのげというのに国内で足りなくなったら輸出をやめて国内に戻せっていうのは納得できない(日経新聞10月31日より一部引用)

苦しいときは見て見ぬ振り、自分のところが困ったら助けろというのは確かに身勝手とも言えます。

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ダンボールが無いと何が困るのか

以上のように古紙の国内不足で値上がり必至という記事を書きましたが、では一体ダンボールの価格が上昇すると、どうして私たちは困るのでしょうか。

答えは簡単で、物を運ぶためにいろいろなところでダンボールが使われているからです。スーパーに野菜や商品を卸す際に、商品の梱包材として使われます。

また、アマゾンなどの通販で買った商品は、それぞれのメーカーのダンボールに梱包されて顧客に届きます。

何か商品を運ぶ際に、箱に入れずに運ぶと商品が衝撃や腐食等により品質などが劣化する恐れがあるため、モノを運ぶ際の梱包材としてダンボールが使われているのです。

原紙価格が1円上がると、費用は1億円上がると言われているのですが、その価格が今ものすごい上昇率となっているため、企業は頭を抱え始めている、ということです。

ある程度の上昇であれば、いわゆる「企業努力」で一般の顧客に対しての値上げはなるべくしないことも考えられますが、現状では「箱」自体が不足すると懸念されているので、「モノはあるけど、運べない!」という最悪のケースが可能性として出てきたということです。

現状、ダンボールに変わる梱包の打開策が出ていない状態のため、年末等でアマゾンをはじめとする通販のセールや、野菜や日用品の商品が運べなくなる危険がある、ということです。

まとめ

この物流危機を打開するには、古紙業者が海外への輸出を減らし、国内流通の量を増やすことが一番の解決策ですが、わざわざ利益を減らして慈善事業のようなことを率先して行うことは中々考えにくいです。関連会社が困っているときに、お互いが助け合うような関係を日頃から原紙メーカーと古紙業者で出来ていればもう少し話は違っていたかもしれませんが、年末に向けてどうなるかは今のところはわからないというのが実情です。

 

今日は、私たちの生活をする上で必須だけど、あまり重要視されていないダンボールに焦点を当てた記事を書きました。企業同士が協業して打開策を講じてくれるのを願うのみです。

 

それでは、今日も素敵な1日となりますように、のだめでした。