前の職場で起きたこと、今昔物語。

おはようございます、のだめです。

 

今週も頑張って乗り切り、待ちに待った週末です。

今月は祝日が無い月なので、週末はしっかりと身体を労わりたいですね。

 

今日は前の職場シリーズです。

当時とても小さなパチンコ店で働いていたのですが、その時のお話です。

 

パチンコ店に行ったことのある人は見たことがあるかもしれませんが、遊戯台の調子が悪くなったり、部品が壊れたりしたときは、台の電源を落とし、調整中とか、故障中などのラベルが貼られて、遊戯出来ないようになっています。

 

台が壊れてしまったとき、お店としては特に人気のある台は、1日でも早く動かしてお客さんに遊戯してお金を使ってもらいたいので、すぐに壊れた箇所の部品を交換する手続きを行います。

 

私の働いていたお店でも正式な手順を踏んで部品を注文していました。

(正式な手順を踏まずに部品を交換すると、「無承認変更」とよばれる、いわゆる不正行為に該当し、営業停止などの処罰を受けることがあります)

 

遊戯台自体が昔の台ならば、台の作りも基本的には「え?こんな作りで動いちゃうの?」というほどのチープな作りになっているのですが、

 

最近の台は、演出を盛り上げるのに使用される「役物(大抵は液晶前部か液晶上部に設置されている)」と言われる部品が過剰演出のためにどんどん複雑化、進化して行き、その複雑化、進化に合わせて、部品構成もより複雑化して行くことになります。

 

ですので、「役物部品の動作不具合=役物本体の部品破損」という図式が昔の台は通用しましたが、台の進化・複雑化により通用しなくなっていきました。

 

なので、故障部分が簡単には特定出来ないので、ほとんどのお店では、「故障した役物一式を交換する」という手順を踏むことになります。

 

部品交換の手順は一番これが手っ取り早いですが、当然ながら部品一式まるまるの交換なので、部品代も高いです。

 

壊れた箇所を細分化して、特定出来れば、その部品だけの交換になるため、部品代は安くなります。

 

以前、部品をまるまる交換すると5万円かかるとメーカーに言われたことがあるのですが、原因箇所を突き止めた結果、その部品なら500円で結構です、と言われたことがありました。

5万円が500円になった訳ですから、分解作業をする価値があることは分かるかと思います。

(その台は中古で1万円で買った台だったので、部品交換に5万円は到底出せません。特定出来ない時は撤去になる運命でした)

 

ですのでウチの店では、まるまる交換するとお金がもったいないので、分解できるだけ分解して、原因箇所を突き止めてから該当の部品だけを交換する、というとてもめんどくさい手順を踏んでいました。

 

部品丸ごとの交換はお金がかかる分、時間的に非常に大きなメリットがある

部品特定しての交換は時間がかかるが、お金が非常に安いというメリットがある

 

時間を取るか、お金を取るか、その両方を天秤に掛けることになる訳です。

 

細分化を出来るだけして原因を追求する、まぁ分解するだけなら誰でも出来るのですが、メーカーも基本的には部品一つ一つになるまで店側で分解するということを想定していないので、簡単な台の取説はありますが、そんな細かいことまでは載っているわけがありません。

 

そのため、誰でも分解は出来ますが、問題は、分解した後、元に戻せないことが多々ありました。

 

まだ、スマホも普及しておらず、写真におさめるのも容易ではなかったので、分解したものを手探りで元に戻すというのはとても難しい時代でした。

 

分解するとなると、当たり前ですが、定時退社など出来るはずもありません。

社員の誰もがやりたくない仕事の一つだったわけです。

 

不運にも会社から徒歩5分のところに住んでしまった私は、いつも

「のだめちゃん、よろしく」

とご指名がかかりました。

 

私も残業はしたくはありませんでしたが、当時はまだイチ社員の身分だったため、断る事も出来ません。もちろん上司も残ってくれますが、基本分解作業は自分一人です。上司は事務所で睡眠です。

 

初めてこの分解作業に携わったときは、分解して原因を突き止め、そして組み立てという作業に8時間かかりました。

 

深夜0時に作業を開始して、朝8時早番のスタッフが出勤してくるまで修理しているのもザラでした。

 

そんな私の姿を見ると、なおさらこの分解作業は誰もやりたくない仕事になって行き、いつからか、台が壊れたらのだめにやらせろ、という空気になっていました。

休みの日でも台が壊れれば閉店後に呼ばれるのでたまったもんじゃないですよね。

 

当時は断ることなど出来ないので、台が壊れれば分解→原因追求→組み立てをいつもやっていました。

 

ですが、人間って不思議なもので、何度も何度も面倒な作業をやっていると、自然に体が覚えて行き、台の仕組みが分かってくると、作業時間がどんどん短縮して行くんですよね。

 

それと合わせて、スマホが普及し始めた頃だったので、作業行程を写真や動画で撮影することができるようになり、格段に作業効率が上がって行きました。

 

最終的にはホールにあるほぼすべての台の分解をマスターするまでになり、台の作りを熟知出来るようにまでなりました。

 

営業中に起きた台のトラブルも、熟知していたので、その場ですぐにメンテナンスをして、動かすことができました。(釘が折れちゃったりしてその場で動かせないものはどうしようもありませんでしたが)

 

閉店後に、再度トラブル箇所を確認して、細かなメンテナンス、掃除を行って、部品交換が必要なのか、店側のメンテナンスで回復が可能なのかを判断出来るようにまでなっていました。

 

この分解は私が現場から完全に離れるまで自分の仕事になっていました。

 

なので、私が辞めることを決めたときに、流石にいつまでも自分がこれをやっていたら誰も出来なくなる、と思い別の人間にやらせるようになりました。

 

しかし、私が退職の意向をはっきりと会社に示した頃に、遊戯台で大きなトラブルがおきました。

 

部品が壊れたのですが、誰が見ても徹夜コースのめんどくさそうなトラブルでした。

 

そこで私の上司から考えもしない指示が出ました。

 

「分解するの面倒だから、そのままでいいよ」

 

という、今まで聞いたことのない判断が出たのです。

 

目ん玉が飛び出そうになりました。

 

今までの私のしてきたことを、なんだか否定されたような気持ちになりました。

 

「その方針、もっと前から欲しかった」と思いました。

 

私が辞めることを伝えたことに合わせるかのように、会社の方針が「トラブルは現場で治す」から「壊れたら撤去」に転換し始めました。

 

ちょうど過度の残業による過労死問題が社会的にもクローズアップされたこともあり、定時退社が至上命令のようになって行きました。

 

当然、定時退社になると、こういった台の分解は出来なくなります。

ですので、時間のかかる台の故障は即撤去。交換すらしない、という判断を会社が下したのです。

 

ですが、ここで思いもよらぬというか、また別の問題が浮上します。

 

台を分解しなくなったことにより、誰もトラブルを直せなくなる、というわりと深刻な問題でした。

 

この時の会社の方針は、残業して台を直すよりも、残業をしないクリーンな会社でした。

 

潤沢な資金があれば、大賛成ですが、小さな会社にとって、社員の経験値が上がらないことは、会社の規模を大きくする人材の育成を止めることに繋がることだと思っていたので、この決断は失敗なのではないかと具申しました。

 

無駄な残業を減らすこと、やらなくてもいい残業を無くすことは誰しもが望んていることだと思うし、むしろそんな残業なら即刻廃止すべきことだと思うけれど、、それでもどうしてもやらなくてはいけないときもある、と私は話しました。ですが、

 

「いや、でも社員の時間を大切にしたい」

 

という、よくわからない説明が返ってきました。

それなら今までの私の時間は返してくれるのですか?とカッとなってつい言ってしまいましたが、

 

「そういう時代だったから」の一言で済まされました。

 

そんなこんなでモヤモヤしたまま退社を迎えました。

 

先日、前の職場の近くによる機会があったので挨拶に行ってきたのですが、年末年始に起こった認定機問題や撤去問題の絡みもあってか、余計な機械代がかさみ、遊戯台を買うことが出来ないし、故障台を治すことも出来ない。

店内には調整中の札が貼られて電源が落とされた台が結構ありました。

今は入れ替えも殆ど出来ず、スタッフも足りていないけど、募集をかける余裕も無いし、募集をかけたところで集まらないので募集もやめたとのことでした。

 

別に残業を無くしたからこうなったこういう結果になったとは全く思いませんが、以前のように最低限台を治す、という作業を続けていれば電源を落とさずに済んだかもしれないいわゆる「死に台」は減らせたのではないか、と思います。

 

今でも、前の会社のことは好きですし、この業界のことも好きです。

頑張って欲しい気持ちはありますが、経営陣の考えることだけはあまり理解出来ません。

 

そんな気持ちがあったから、会社を辞めたのかもしれません。

 

今、パチンコ業界を取り巻く事情はなかなか厳しいですが、そこで働く人が健全な働き方が出来る業界になればいいなぁと思っています。

 

※文中に残業をしまくっていたことが書かれていますが、この会社の唯一の救いは残業代は全て出してくれたことかもしれません。

社会問題になった残業問題では、サービス残業が問題視され、働いても働いても低賃金で生活レベルは低いまま、ということもニュースになっていました。

当時の自分の気持ちを推し量ることは出来ないのですが、残業代が支払われていたことにより、一般的な収入よりは貰えていたので、それなりの生活が出来ていたことは、救いだったのかな、と思います。