ふと、当たり前のことを当たり前だよ、と感じれるようになったことをありがたく思う。

 自分は、熊のような体格のおかげもあって社長にはよく可愛がられ、飯にも連れて行ってもらった。

 

 半ば罰ゲームでは無いだろうか?と思えるような食事にも連れて行ってもらった。

日曜日のお客さんが混み合う中で、「あー、これは今日イチにち走り回ったら5kgは体重落ちるなぁ」という日に限って、社長から「のだめ、飯行こうぜ」とお呼びがかかる。

 

 正直こういう日はなるべく現場に出たく無いので、ホイホイとついて行くわけだけど、美味しく「ごちそうさまでした」と言えるような食事の場面に遭遇できることは本当にまれで、この日は『ココ壱番屋のカレーを限界まで喰らう大会』が急遽開催された。

 

現場で走り回っても大変。かといって社長についていっても大変、というどちらを選択しても大変という言わば究極の選択に近い選択をさせられる。

 

かといって、早々社長の誘いを断るわけにもいかないので、当然食事に行くことになるわけだ。

 

この日は、ココイチの日。社長の息子さんがココイチでバイトをしていたおかげで、その店の売り上げ貢献のために、よくこのお店には連れていってもらった。

 

この日の大会に急遽参加することになったのは、自分を含め3人だった。それと社長と経理の女性を含めて5人。

 

社長から、「今日は忙しいから、精力たっぷりつけないと、現場大変だろう?だから、好きなだけ食べていいぞ。」

 

とお声がかかる。

 

社長の言う好きなだけ、と言うのは「私が食べたいなぁと思う量」を表しているのではなく、限界を見せろ、と言う意味なので、忖度(使い方が合ってるかは不明)しなくてはならず、

 

「じゃぁ、1300いかせていただきます!」とまぁ、こうなるわけだ。

 

ココイチはカレー専門店なのだが、昔は1300g食べきると無料、と言うイベントがあった。当然、かなりの量になるので食べきれずに断念する人が多数の極めて難しい量でもあった。その名残か、1300gを食べるというのは、限界に挑戦する、という意味でもあって、自分が宣言すると、待ってましたとばかりに社長は

 

ゲラゲラと笑って、「おい、のだめが1300行くって言ってるのに、お前ら500gとかそんなのでいいのか!?」と参加者2人を追い詰める。で、結局3人とも限界の1300gを挑戦することになる。

 

いつも限界に挑戦させられるのが分かっていたので、誰がその口火を切るかを社長は楽しんでいるようだった。

 

「あ、社長、自分1300行くんですけど、足りないかもしれないので、追加トッピングも載せちゃっていいですか?」と社長の喜ぶことをいうわけです。

 

そんなことを言えば喜ぶことも分かっているので言うわけですが、そう言うことをいうと当然残りの2人の食べるものにも必然的にトッピングがされるわけで、、、

 

注文をして、出来上がったカレーが目の前に3つ大皿で並んだときは、いつも社長は歓喜して、ガハハと笑っているのでした。

 

当然ではあるけれど、社長の目の前で、見栄を切って注文したものなので、食べ切れませんと言うのはもちろん禁句でした。

 

食べきれない場合は、閉店後に飲みに連れていかれて、都内で飲んだ後にそこに放置される、と言う罰ゲームが待っているので、3人とも必死にカレーに食らいつくわけです。

 

そんな中、その日はめちゃくちゃ忙しいと言うこともあって、お腹がめっちゃ空いた状態で都合よく声をかけられたので、1300gは余裕でした。

 

ものすごい勢いで1300gを平らげて、社長、もう少しいけそうなので、おかわりしていいですか?と言ってしまったほどだ。

 

結局この日は私は極限までお腹を空かせていたこともあって、余裕で1300gを完食してしまった。残る二人のうち一人は何度かトイレに駆け込みながらの合わせ技を使いながら完食?。

最後の一人は、裏技を使っても結局完食出来ず、「もう食べれません」とギブアップした。

 

帰り道、社長が、「うちの会社の車は、食べ物を粗末にする人は乗せれません。食べ切れなかったものは走ってついてきなさい」と言う厳しいもの。

 

食べ切れなかった最後の一人が涙目で、必死に車について行こうと走りながら追いかけてきていた。

 

走りながらついてきていた残念な人は、口からカレーが噴射したところで、車から離されてしまって、結局2時間遅れで会社に戻ってきた。

 

ワイシャツカレーまみれだった。

もう、カレーを噴射してしまったことで、頭のネジが一つ飛んでしまったのか、その人もゲラゲラ笑いながら会社に戻ってきたのだった。

 

それを見て社長もゲラゲラと笑うのでした。

 

そんな限界まで食べようゲームが頻繁に開催されていた職場なので、ついに罰ゲームの常連の自分を含めた3人のうち一人が体を壊して入院することになった。

 

入院の一件があってからは、社長も気にしてなのか、限界ゲームが開催される頻度は極端に減ったわけですが。

 

そういった、今考えたら「確実にこれ、パワハラだよね?」と思えることを頻繁にやっていたこともあって、自分の体が鍛えられてしまっていたのかもしれません。

 

もしかしたら、そういう危ないことを頻繁にやっていたから、逆に身体を蝕みつつあったとも言えますが。

 

そんなこんなで、大変ではあるものの楽しい職場だったわけですが、諸事情で会社を辞めることになりました。

そんな食生活をしていたせいか、今の仕事に就いてからもあまり食事事情が変わらないまま、事務系の仕事量になったものだから、一気に体に負担がのしかかってきてたのだと思います。

 

今、普通に歩いたり、走ったり、寝転んだり、歩きすぎて疲れてみたり、と今まで当たり前に感じてきたこと一つ一つのことがとても新鮮で。

 

当たり前のことって当たり前の中にいると、気がつかないものなんですよね。

 

当たり前じゃなくて、とても素敵なことなんだって。 

そんなことをふと思ったので、思い出し書き。